[Bass] 「Sleek Elite」さんにお邪魔してきた
先日、
手持ちのベースを調整してもらったり、
KSDのピックアップの件などで色々お世話になっている「
Sleek Elite」さんにお邪魔しました。
小田急小田原線の東北沢駅を降りて歩くこと数分、緩やかな坂を下った所にある一見何の変哲もない民家の中には、素晴らしい機械とそれを操る素晴らしい人がいらっしゃいました。
冒頭で手持ちのベースを調整してもらったと書きましたが、その調整方法というのが「PLEK」という、この電話ボックスのような機械を用いてベース(ギター)の状態を計測してデータ化したものを元に綿密な調整を行うシステムなんです。
PLEKについては過去に記事を書いていますので、そちらをご覧くださいませ。私のベースたちもこのPLEKにお世話になりっぱなしなんですが、今回この機械をこの目で見るのは初めてでとても感動しました。調整されるベースはこんな風に固定されるようです。
固定されたベースのヘッド部分は上の写真のようにペグ部分に電極クリップをはさみます。こうやって弦に電気を通して弦の振動等の様々なデータを計測するようです。
機械内部は金属製の箱が積み重なったような状態になっており、そこからデータを送受信するためのものと思われるコード類や、ナットの削り出しなどで発生する粉塵と吸いためと思われるホースなどが繋がっていました。ちなみに写真中央より少し下に見える、筒状になっている部分の付け根にあるぎざぎざした所でフレットを削るようです。ちなみにこの研磨する箇所に使用されているパーツの消耗具合はきちんとデータ管理されているらしく、頃合いになると自動的にPLEK本部から新しいパーツが送られてくるというから驚きです。
さらに近寄ってみました。金色の槍先みたいなパーツが計測の要となる箇所で、ここでネックの反り具合やフレットの山、ネックのスケール、さらには弦を振動させてバズ(びびり)が生じていないかどうかのチェックは、ここのパーツが全て関わってきます。そして上に見える細いドリルの先端みたなところでナットを削ったりするようです。
こうやって細かく計測されたデータを元に、最適な状態を導き出し調整をするのがPLEKのシステムです。このシステムの最大の利点は、調整を行う前に現在の状態と理想とされる状態の比較ができること。フレット研磨などの後戻りのできない調整前に目標値を導き出せて、調整するにあたり研磨しすぎるなどのリスクがとても低くなることではないでしょうか。しかもこのPLEK調整を行った楽器のデータは世界中で蓄積、共有され、参考値になるということです。言い方を変えれば、著名なメーカーのマスタービルダーが施すセッティングも容易に再現できるという事です。
しかしこのようなシステムも機械だけではなく、最終的にその機械を扱う人の手によって仕上げられるということも重要なポイントで、例えばPLEKマシンが導きだした理想のネックの反り具合は人の手によってトラスロッド調整が必要です。人と機械それぞれの良い点が重なりあって、はじめてPLEKの素晴らしさが発揮されるものだと思います。このPLEKにいち早く着目し、導入されたSleek Eliteの広瀬さんは改めてすごい人だなと思いました。
ちなみにこのPLEK、少しずつバージョンアップされているようで、PLEKマシンでできる作業が少しずつ増えていっているようです。今後どのような進化をしてくれるのか非常に楽しみです。
さて、今回Sleek Eliteさんにお邪魔した目的はPLEKをこの目で見ること以外に、広瀬さんが所有されてらっしゃる「Dingwall」のベースを実際に試奏すること。そしてもうひとつは広瀬さんに直接お会いすることです。(
広瀬さんのDingwallを試奏させていただいた件につきましてはすでに記事をアップしていますのでそちらをご覧くださいませ)
広瀬さんと関わりのある方ならお分かりいただけると思うんですが、これほど「誠実」という言葉が当てはまる方は中々いないんじゃないでしょうか。以前から何度もメールでやり取りさせていただいていましたが、楽器に対しても人に対してもその誠実さが文面に溢れる方なんですよね。実際にお会いしお話してもその印象は変わらない方でした。しかしながらいわゆす堅物といった雰囲気ではなく、柔らかい雰囲気をお持ちの方でした。
お話いただいた中で印象的だったのが、「持ち込んでいただいた中古の楽器を見ると、その楽器を販売していたお店がどれほどお客様のことを考えているかがよくわかることがあります」という事でした。以前、ベースを中古で購入され方がそのベースに対し違和感を抱いたので購入した楽器店に相談した所、そのお店では「この楽器はそんなものですよ」と言われたそうです。そして後日そのベースを広瀬さんが見たところ、PLEKで計測しなくてもわかるくらいフレットの高さにばらつきがあったそうです。
実は私も初心者の頃こういった経験をし、当時泣き寝入りしたことがありました。今でこそそれなりに経験を積み、幸いな事に今は広瀬さんのような方がいらっしゃるのでそういった心配はないんですが、楽器を弾き始めた頃ってそういった部分に自信や確信が持てず、言いくるめられる可能性が高いんですよね。広瀬さんはそのような出来事に直接的な批判こそされませんでしたが、そういったお店に対し良い印象は持たれていないようでした。もちろんこの件に関しては私も同感でした。そしてその後に広瀬さんが仰った言葉に心を打たれました。
「もしその人が一生付き合う一本に出会うとして、それに出会うまでなるべく遠回りせず無駄なお金を使わない方が良いじゃないですか。そうやって一生ものに出会う近道できたら、遠回りしなくて済んだ分のお金を使って良い音楽をいっぱい聞けるじゃないですか。そうすることでその人の一生を変える可能性がある。そしてその人が奏でる音で、それを聞いた人の一生を変える可能性がある。その近道のお手伝いをしたいだけなんです」
この言葉を聞き、私は広瀬さんにお会いすることができて本当に良かったと思いました。これからもベースの事で色々とお世話になることでしょう。これからも多忙だとは思いますが、体には気をつけて色んな人の「近道」を示して下さいますよう応援しています。お持ちの楽器のメンテナンスや調整をお考えの方は、広瀬さんに一度相談されてみてはいかがでしょうか。きっと納得の行く状態に仕上げて下さると思います。
最後にお別れする際、「広瀬さん自身を撮らせてもらっても良いですか?」と聞いてみた所、即答で快諾くださいました。しかも「せっかくだから」と、ご自身の「Dingwall Z3」を抱えられて決めポーズまでして下さいました。
どうやら広瀬さんは誠実なだけではなく、意外とお茶目な一面もお持ちのようです(笑)。機会があればまたお邪魔したいです。
広瀬さん、ありがとうございました。
<サイト内リンク>
PLEKとMayonesを試してきた
Fodera(フォデラ)の6弦ベースを調整したので試奏してみた
「KSD(Ken Smith Design)」のピックアップに交換した
「Dingwall」のベースを色々試奏してきた
<関連リンク>
Sleek Elite
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