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[Food] シュールストレミングを食べた

先日、いつもお世話になっている「森岡澄夫」さんこと「超電磁P」こと「はちゅねミク親衛隊長」殿が娘さんと一緒に大阪に来られました。

森岡さんが主要メンバーとして活動されているSOMESAT（ソーシャル・メディア衛星開発プロジェクト）の勉強会が大阪で行われるので、それに参加するためというのが主な理由です。今回私はそこに少しだけお邪魔することにしました。私がお邪魔した理由は、SOMESATの皆さんにはいつも「はちゅねミク」を可愛がってくださっているので、直接ご挨拶してお礼を言いたかったのと、あともうひとつは、



これを食べてレポートするからです。

この大きな缶は「シュールストレミング（Surstromming）」といって主にスウェーデンで作られるニシンの塩漬なんですが、「とある事」でとても有名な食べ物なんですが皆様ご存知でしょうか。世界三大珍味？いいえ違います。実はこのシュールストレミングには別名があって、度々テレビなどのメディアでも取り上げらるほどなんです。

「世界一くさい食べ物」として。

このシュールストレミング、一見缶詰なんですが厳密に言うと日本では「缶詰」とは表記できません。なぜかというとこのシュールストレミング、日本では缶詰と呼ばれる食品とは違い加熱殺菌処理がされてなく、缶の中でニシンの塩漬けが発酵し続けるという特性があるため、加熱処理を行わないと「缶詰」と表記することができない日本の法律上、缶詰とは認められていないようです。

発酵するという特性があるために発酵が進むと中でガスがどんどん発生し、缶がパンパンに膨らんでくるため、現在空輸は禁止されています。なので輸入する場合は船でちゃんと冷蔵されていないとダメなようです。温度が高いと発酵の進行も早くなるらしく、下手すると中身がドロドロになっちゃうようです。

そして肝心のニオイなんですが、世界中にあるくさい食べ物の「くささ」を数値にしたデータがあるのですが、日本国内で「くさい食べ物」の代表として挙げられる「くさや」が最も臭くなる焼いた状態での数値の6倍以上の数値を叩き出すバケモノです。ちなみに「くさや」の焼いた状態は数値は、納豆の3倍ぐらいだそうです。

ちなみに聞くところによると、このシュールストレミングを作っている本場スウェーデンでも、このニオイに耐えられなくて食べられない人が多いそうです。そんなシロモノを食べ物と読んでいいのかと疑問に思いますが、日も暮れ始めていたのでSOMESATの皆さんと一緒に近くの河川敷に足を運びました。到着した時はもうすでに日はほとんど暮れていましたが、幸い街灯の光が少し届く場所があったので、そこで開缶式を行うことにしました。



森岡さんが早速準備を始められました。ビニール袋の中にシュールストレミングがあるのが確認できます。



三重くらいに厳重に包まれた缶を取り出し、これで開缶の準備は終了です。が、問題はここから。誰がこのクリーチャーに缶切りの刃を入れるかです。それについて話し合っている際に、「私が行きます」という声が。勇者誕生の瞬間です。勇者さんは早速、開缶の準備を始められました。



そしてレインコートと手袋、マスクを着用しはじめる勇者さん。なぜこんな重装備をするかというと、缶を開けた際にガスと共に中の液体が飛び出す可能性があるようで、その液体が衣服や肌に付着してしまうと、その強烈なニオイがずっと取れないからだそうです。こんな食べ物と呼ぶのもためらう物体を生み出したスウェーデンの漁師にはノーベル不平和賞を贈りたい気分です。



どう見ても爆弾処理です。本当にありがとうございました。

この写真だけを見せられ、「これは何をしている所でしょう？」と聞かれて、「缶詰を開けている所」と答えることの出来る人が一体この世の中に何人いるのでしょうか。河川敷で白いレインコートを着用し、うつ伏せになっている人を20人近くの人間が円状になって囲んでいる様を巡回してる警官に見られなかったことを今では幸いに思います。

とは言いつつも、皆さんシュールストレミングには大変興味を持たれていたようで、勇者さんが開缶を始められたくらいまでは皆さん、怖い怖いと言いつつも、皆さん缶が開く瞬間を今か今かと和気藹々としていたんですよね。しかし、



「プシュッ」

と音がした瞬間、勇者さんを取り囲んでいた皆さんが光の速さで逃走し始めました。叫び声とともに逃げ惑う皆さん、特に風下にいた皆さんの反応の早かったこと。私は風上にいたのでワンテンポ遅れましたが、ニオイをかいだ瞬間、なぜか心の中で「ごめんなさい」と叫んでしまいました。私もそれなりに生きていましたが、本当に「クサイ」というのはこういう事だったのかと思うくらいの経験でした。なんか変な色の汁出てるし…。

そしてふと辺りを見渡すと、さっきまでお父さんにベッタリくっついていた森岡さんの娘さんが、一人で一番遠くまで逃げていました。父娘の絆をも一刀両断してしまうシュールストレミング。恐ろしすぎます。しかしここからが本番。いよいよ勇者さんが地獄の釜の蓋を…



何これ。

写真ではニオイをお伝えできないのは本当に残念です。何度かテレビでこのシュールストレミングを見たことがあったんですが、いわゆる「リアクション芸人」さんたちがこれのニオイを嗅いで卒倒するといった感じのものばかりで、その姿を見て「テレビ向けに大げさなリアクションしてるんだろうなぁ」なんて思っていました。はい、私が愚かでした。

あまりのニオイに誰も近寄ろうとせず、一体誰が食べるんだという空気の中、「じゃあボクが行きます」と、さらなる勇者さんが現れました。湧く歓声。新たな勇者さんは缶の前に座し、箸を伸ばしました。若干魚っぽい姿を残すその物体をゆっくりと口に運ぶ勇者さん。そしていざ試食。その数秒後、川辺には苦悶の表情を浮かべ吐き出す勇者さんの無残な姿がありました。

その後、誰も手をつけようとしないまま時が流れました。このまま誰も食べきれないまま終わっちゃうのかなと思っていたんですが、その際にふと、「もったいない」と思う自分がいました。貧乏性なせいでしょうか。



ええ、食べましたとも。

実際に食べた感想としては、まずクサイ。そして超クサイ。口の中に入れた瞬間、食べる前に嗅いでいた悪臭のもっと強烈なものが口の中に広がってかなり苦しかったです。ドブや生ごみのニオイを濃密にしたような感じです。ウ○コの方がまだマシだと思いました。あと、口の中に入っている時に大きな呼吸はしない方が身のためだと本能レベルで感じました。味の方はかなり塩辛く、本来ならジャガイモやオニオンなど、様々なものと合わせてパンに挟んで食べたりするものなので、そのまま食すのはちょっと辛いものがありました。食感はアジの刺身のような歯ごたえがあり、プリプリしていました。

飲み込んだ瞬間もかなりニオイがきつく、暫くはゆっくり呼吸するように努めました。正直言ってかなり苦しかったですが、皆さんの歓声と拍手のおかげで報われました。あと、直後に飲んだコーヒーがとても美味しく感じました。しかしながら試食会の後も試練は続き、しばらくは胃の中からシュールストレミングのガスが上がってきて、それが漏れる度に目の前が揺れそうになっていました。

人生は一度っきりだから色々経験するのは良いことだとは思いますが、二度と経験しなくてもいいものも世の中には存在することを確信した一日でした。


追伸：
SOMESATの勉強会に参加された皆さん、本当にお疲れ様でした！直接ご挨拶できたことが大変嬉しかったです。今度もはちゅねさんの事をよろしくお願いいたします！

<関連リンク>
ソーシャル・メディア衛星開発プロジェクト SOMESAT
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シュールストレミング - Wikipedia